アドラー心理学入門ならこの1冊

近年、関連書籍のヒットによって日本国内で注目を集めるようになった「アドラー心理学」。

多くのビジネスや教育の啓発本で特集されていますので、目にする機会が増えたという人は多いのではないでしょうか。

しかし急に知られるようになった学問ですので、「名前だけは知っているけど実はどんな内容なのかわかっていない・・・」なんて人もいるかもしれませんね。

今回はそんな人にオススメしたい、アドラー心理学入門書をご紹介します。

 

☆『アドラー心理学入門-より良い人間関係のために-』岸見一郎

 

2013年、古賀史健氏と共に出版した『嫌われる勇気』がベストセラーとなり、日本にアドラー心理学ブームをもたらした岸見一郎氏が1999年に初めて著した新書です。
日本のアドラー心理学の第一人者である岸見氏は大学時代、西洋哲学が専門で、アドラー心理学を学び始めたのは1989年、京都大学大学院を満期退学してから2年後のことでした。

岸見氏は様々な哲学や心理学に触れる中で、「今この瞬間から幸せになれる」と語るアドラー心理学の学者の言葉に違和感を覚え、アドラー心理学に興味を持つようになったのだそうです。

当時日本で有名な心理学者といえば『夢判断』のフロイトや分析心理学の創始者であるユングで、アドラーの名はほとんど知られていませんでしたから、岸見氏は日本のアドラー心理学の草分け的存在と言うことができるでしょう。

そんな岸見氏の『アドラー心理学入門-より良い人間関係のために-』では、アドラー心理学の根幹となる考え方やアドラーの考え出した独自のカウンセリング手法が、実例を交えながらわかりやすく紹介されています。

この本でアドラー心理学の骨子を学べば、今やたくさん出版されている派生本の内容がよりわかりやすくなるでしょう。

 

☆アドラーが伝えたかったこと

 

オーストリア・ウィーンで町医者としてそのキャリアをスタートさせたアドラーは、日々の診療の中で様々な人に出会います。

フロイトに招かれウィーンの精神分析協会議長に就任したり、第一次世界大戦に軍医として参加したりといった経験の中でアドラーはアイディアを練り、理論を確立していきます。

特にそれまでの心理学の思想と一線を画しているのは「目的論」という考え方です。

例えば「雨が降っているから、出かけたくない」と考えるのは原因論であり、目的論の立場からいえば「出かけたくないから、雨に対してネガティブな感情を作り出した」と考えます。

これはそれまでの因果律(原因があるから結果がある)を大きく揺るがす考え方です。

そしてアドラーはこれをただの理論で終わらせず、実践の場に適用していきました。

アドラーの立場から言えば「人見知りだから、すぐに人の輪に溶け込めない」のではなく、「すぐに人の輪に溶け込むための努力をしたくないから、性格のせいだと思い込んでいる」のですし、「学歴がないから、良い就職ができない」のではなく「良い就職のために必要な努力をしたくないから、学歴のせいにしている」と言えます。

「原因→結果」、ではなく自分で望む結果(意図的であるかはともかく)のために原因を作り出しているのです。

厳しい言説に聞こえるかもしれませんが、裏を返せば「過去にどんなことがあろうと、それに捕らわれることはない」という希望に溢れた理論だと言うことができます。

うまくいかないことに対する言い訳を許さない厳しさと共に、「自分の気持ち次第でどんな未来も選ぶこともできる」という非常に前向きなメッセージをアドラーは発信しているのです。

 

☆人間関係で悩まないために

 

対人関係の中で「幸せ」を語るときに彼が何よりも重要視したのは共同体感覚、すなわち、個人は個として存在するわけではなく全体の一部である、という考え方です。

ここで言う“共同体”とは会社や家族といった組織だけでなく、もっと大きな枠組みにも関わり、最終的には宇宙にまで広がっていくアドラーは定義しています。

他者を仲間として認識し、その仲間に対し貢献をしていくことで共同体の中での自分の存在価値を見出すことができ、幸福感へと繋がっていくとアドラーは言います。

しかしこのとき、自分の貢献に対し他者からの感謝や承認を求めてはいけません。

相手からの見返りが欲しくて行動しているうちは、自身の幸福感は相手の行動に依存していることになり、自分自身の行動によってはもたらされません。

「相手が感謝してくれる」ことではなく、「相手の役に立てているだろう」ということに充足感を抱けるようになれば対人関係でイライラしたり相手に不満を持ったりすることも減るでしょう。